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どうしてだろうか、
ふとオルゴールの音色を耳にしたとき、
悲しく響くことがある。
ときどき、そういうことがある。
こういう言い方はどうかとも思うのだけど、
亡くなった父は、いわゆる、ろくでなしだった。
ギャンブルにのめり込んで、
家庭のことなんて、ほとんど顧みない。
ふらっといなくなることもあって、
いないのが普通、みたいな時期もあった。
まぁ、そういう人だった。
ただ、不思議なことに、
誕生日になると、
なぜかオルゴールを買ってくる。
決まって、ああいう、
ゆっくりした音のやつ。
嬉しかったのかどうか、
そのへんは、あまりよく覚えていない。
ただ、音だけは、残っている。
いつからか、僕は父に寄り付かなくなった。
理由はいくつもあった気もするし、
ひとつにまとめるようなものでもない気もする。
近くにいると、
余計なものまで見えてしまう、
そんな距離だったのかもしれない。
やがて父は亡くなって、
オルゴールも、どこかにいった。
手元には、もう何もない。
なのに、
あの音だけが、たまに戻ってくる。
ふとしたときに、
理由もなく、
場面もなく、
ただ音だけが、すっと浮かんでくる。
あの人は、
何を思って、あれを選んでいたのだろう。
別に、深い意味なんてなかったのかもしれないし、
ただ、その場の気分だったのかもしれない。
あるいは、
言葉にできない何かを、
ああいう形でしか置いてこられなかった、
みたいなことも、あったのかもしれない。
まぁ、わからないのだけど。
人が何かを残すときって、
たぶん、そんなにうまくいかない。
ちゃんと伝わる形で残ることのほうが、
むしろ、少ない気もする。
気づけば、
音だけが残っていたり、
匂いだけが残っていたりする。
そういう、
うまく言葉にならなかったもののほうが、
あとから、しつこく残る。
オルゴールの音が、
悲しく聞こえる理由なんて、
たぶん、ちゃんと考えないほうが
いいのかもしれない。
ああいうのは、
わかった気になった瞬間に、
どこかへいってしまいそうだから。
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