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小学四年生だったか、五年生だったか。
学年は曖昧なのに、その店のことだけは妙に残っている。

近所に、ある日ぽつんと駄菓子屋ができた。
店番はおばあちゃんが一人。
商売慣れしている様子もなく、
子どもの扱いもうまくない。
値段を言うのにも少し間があるような、いかにも素人の店だった。

それでも僕は、あの慣れない感じがいやではなかった。
本当に家の近所だったので、
ふらっと寄って、暇そうなときは話し相手になった。

おばあちゃんは、ときどき僕に相談をしてくれた。
子どもが好きなお菓子はどんなものだろうか、とか、
どんなものを置いたら喜ばれるのだろうか、とか。

僕も僕で、少し得意げになって、
他の駄菓子屋にはこんなものがあるよ、とか、
くじ引きで当たりが出るお菓子なんかも面白いと思うよ、とか、
そんなことを話していた。

おばあちゃんは、うんうんと頷きながら聞いていた。

この店は、息子さんが用意してくれたものだという。
老後の楽しみに、と。

当時の僕には実感がなかったが、
今になれば、店を一つ開くというのは、きっと簡単なことではなかったはず。
看板だってちゃんとしていた。
黄色地に黒の太字で「ぽぽちゃん」と書かれたその看板、
確かおばあちゃんが子供だった頃のあだ名なのだとか…

店は、長くは続かなかった。

上級生である近所の悪童たちが、店を遊び場の延長のように扱い、
からかい、勝手にお菓子を触り、
何人かで壁を作り、
その陰で、時にはくじの景品を持っていく。
おばあちゃんは、完全に手元を見ていないからと叱ることもできず、困ったように苦笑いするだけだった。

そして僕は、その様子を知りながら、何も言えなかった。

止める勇気もなければ、
大人に伝える発想もなく、
ただ、その場にいるだけだった。

店がなくなったあとも、
そのことだけが、妙に胸の奥に残った。

駄菓子屋が消えた寂しさというより、
悪事を知りながら黙っていた自分のふがいなさが、小さな棘のように、ずっと心に引っかかっていた。

親思いの息子さん、
老後の道楽としての店、
そこに集まった悪童たち。

そして、その場にいたのに何もしなかった僕。

結局、あの店に残ったのは、
看板でも菓子でもなく、
僕の中に残った、少しヒリヒリした記憶だったのかもしれない。

人の善意や、
誰かのささやかな楽しみを奪っていることに、
あの頃の僕らは、どこまで気づいていたのだろう。

子どもというのは、
ときどき驚くほど無邪気で、
そして同じくらい残酷だ。

いろいろな意味で…

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